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誌上個展

マツダ コスモ スポーツ L10B (ハセガワ 1/24)

by 田口博通 Hiromichi taguchi

  Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。

 2018年4月号から再開したビンテージ・ガレージ 第5シーズンは、国内外メーカーから発売されている1950年代から1960年代のビンテージカーを主に取り上げています。
 今月登場するのは ハセガワから発売されている 1/24 マツダ コスモスポーツです。

 マツダ コスモスポーツ ロータリークーペが登場したのは 1960年代半ばのことです。
 1961年 ドイツのNSUヴァンケル社(現アウディ)とロータリーエンジンの技術提携をした 東洋工業(現 マツダ)は 世界初のロータリーエンジン量産化の苦労を重ね、遂に 1967年5月 マツダコスモスポーツ をデビューさせます。
 2シータークーペモデルのボディは未来と宇宙をイメージした その低く、流れるようなボディデザインで センセーションを巻き起こしました。

 ハセガワのコスモスポーツL10Bのキットは、1993年に発売され、その流麗なボディラインが見事に再現されています。エンジンレスのスタイルモデルですが、簡素ながらシャーシー下の足回りを再現していて魅力的なキットとなっていました。
 息の長い名作キットで昨年2017年12月にもガールズフィギュア付で再発売されています。



 ハセガワ 1/24 マツダ コスモ スポーツ 箱絵 

マツダ コスモスポーツ

実車について

 マツダコスモスポーツはロータリエンジン搭載の市販車として独NSUスパイダー(シングルローター式)に続き、2ローター式では世界初の車である。
 レシプロエンジンにない抜群の加速性能をそなえたこのロータリークーペは、当時夢のスポーツカーとも言われた。
 低く流れるようなボディ・デザインは、小型軽量のロータリー・エンジンだからこそ実現できた。開発当初、当時の社長である松田恒次から「売り出すつもりのないイメージカーだ」といわれたからこそ、この思い切ったスタイリングが生まれたともいわれる。ボディはセミモノコック方式で開口部以外には継ぎ目がなく、ハンドメイドのスペシャルカー然としていた。 
 搭載した2ローターのロータリーエンジンの実用化には大変な苦労を伴い、ドイツのNSUヴァンケル社の初期技術供与を受けて1961年に始まった開発作業はそれから6年の歳月を費やしている。
中でも最大の難関だったのは、一定時間運転するとエンジン室内壁面に発生する「チャターマーク(波状摩耗)」、いわゆる「悪魔の爪痕」だったそうだ。高強度カーボン材にアルミを含侵させたシールを開発してやっと克服し、マツダの2ローター・ロータリーエンジンは1967年に実用化に成功している。
 (引用 及び 参考 wikipediaなど)

低く流れるようなボディライン



 コスモスポーツは940kgの車体に 総排気量491cc×2、最高出力110PS、最大トルク13.3kgmを発生する2ローター式10A型エンジンを積み、最高速度185km/h、0-400m加速16.3秒をたたき出した。   初めて2ローターのロータリーエンジンを搭載した宇宙的なボディデザインの記念碑的な名車ゆえ、現在も数多くの実車が大切に残されており、またレストアされた車も数多い。

(写真) マツダに展示されている実車写真 (wikipediaより引用)

製作

  ハセガワのキットはモールドも良く、部品の合いも大変よい。ただ、組み立て説明書に難があり、その読解が初心者には難しく、製作はパズル的、知恵の輪的な要素ふんだんで、ある程度の経験を積んだ人向きだ。
 ラジエーターグリル用のメッシュも付属しており、メタル部品で細かい文字が再現されている。うまく作ることができると素晴らしいコスモスポーツが完成するはずである。
   メッシュ部品とメタル部品

ボディの塗装

 ハセガワのキットはエンジンレスのスタイルモデルなので まずはボディの塗装から。
 ボディ部品はシャープなモールドで可動部も無く、白のプラスチックでモールドされている。パーティングラインはほとんど目立たないが、丁寧に1200番から2000番の耐水ペーパーで消しておこう。
キズ消しと透け防止で一度サフェーサーで下塗りし、その上に、Mrカラーグランプリホワイトを塗っている。ボディ内部は艶消し黒を塗っておいた。

塗装をしたボディ

コクピット

 コクピットは艶消し黒で塗り、キットに付属のフロアカーペットを床に貼る。
シートは黒で、座面にはデカールが用意されている。ステアリングはウッド。



クロス模様のシート座面はデカール

サスペンション

 ハセガワの組み立て説明書には一切の部品名が無く、不親切で困ったものだ。それだけでなく、最初から最後のページの15図まで、ただ図が並ぶだけで、言葉も何も無いのが徹底している。また部品の接着部が解りづらい図となっている。キットを組み立てる消費者とメーカーの間のコミニュケ―ションをメーカー側から断ってしまっていて まるで自閉症にかかったメーカーのようではある。
 せめて、表題くらいは入れておいて欲しいものだ。
 
 フロントのダブルウィッシュボーン式サスペンションはコイルダンパーと上下サスペンション部品から構成されている。
 リアサスペンションはドディオン式のギアボックスとダンパー、左右が一体となった板バネ部品の3点で簡素に構成されている。
 ここを歪みなく、うまく完成できれば、実感が高い。
 ただ、組み立て説明書はパズル的で、図情報のみから 何処にどのように部品を接着すればよいか解読するには、修練と精神力が必要だ。経験を積んだはずの筆者にも ほとんど「知恵の輪」の世界でした。

フロントサスペンションは ダブルウィッシュボーン式


リアサスペンションはドディオン式となっている。


最終組み立て

 タイヤをシャーシーに取り付け、無事 4輪共に机面に接地すれば幸運だ。もし、幸運が得られなかったら、サスペンションの接着部に流し込み接着剤をつけて接着をゆるめ、ヘアードライヤーで温めながら、力を加えていくと、ある程度の修正は可能だ。どうしようもできなかったら、タイヤの接地面をやすりで削ろう。
 ボディのメッキモールにはハセガワトライツールのミラーフィニッシュを使うのが一番簡単で、丁寧に貼りこんでいくと実感高くなると思う。透明キャノピーは透明エポキシで接着し、ボディ内面にはドア内貼りとコンソールを取り付けておく。カウル前部ラジエーターには黒色のメッシュが用意されている。前後部バンパーの水平が完成後もっとも目立つので、注意して固定しよう。
ボディにランプなどを取り付けて、シャーシーにかぶせれば、組み立て完了となる。





完成

 完成したコスモスポーツの姿は魅力的だ。ボディ前部の低いエンジンフード周りと後部トランク部の造形が見事に再現されている。
部品点数が少ないスタイルモデルなのだが、組み立てに苦労する箇所は実感として多かった。が、それはそれで、きっと楽しい思い出となるはず。




コスモスポーツ その後

 コスモスポーツは、前期型(L10A型)が1967年(昭和42年)に343台販売され、1972年(昭和47年)の後期型(L10B型)の最終販売車までの累計で1,176台が販売されている。コスモスポーツから始まったマツダのロータリーエンジン搭載車の歴史は現在にまで脈々と息づいているが、残念ながら 他のメーカーがロータリーエンジンを採用することは無かった。ロータリーエンジンの弱点は燃費と排気ガス対策で、当時のオイルショックで生産中止となってしまったのである。
その波を超えた3年後の1975年にスペシャルティカーの位置づけでコスモAPが発売される。APとはアンチポリューション・公害対策の意味だそうだ。
 コスモAP実車写真 (wikipediaより引用)

 


 その後、1981年発売3代目コスモ、1990年発売4代目ユーノスコスモと続き、ユーノスコスモでは1962ccの3ローターエンジンが実用化されている。
ただ、このエンジンは280馬力と高出力なのだが、市街地走行での燃費は、2km/Lという信じられないような高燃費ぶりだった。それはバブル景気の時代ですら、買うことをためらわせるに十分な要因だったのだ。
最後のロータリーエンジン搭載車はマツダRX-8で、2012年6月生産終了した。これによりロータリーエンジン搭載車は2018年現在、生産・販売されていない。
 マツダではロータリーエンジンの開発は続けられているようでコンセプトカーなどが発表されている。また、未来を先取りした新たな構想のロータリーエンジン搭載車の登場が待ち遠しい。

(以上 引用 及び 参考 wikipediaなど)
 




 ロータリーエンジンの小型軽量を活かした低い流れるようなボディラインのスポーツクーペはロータリーエンジンの生産停止で見られなくなっている。 しかし、最近は 電動モーターカーの普及に伴い、また 素晴らしいスタイルのスポーツクーペが米テスラなどから登場している。楽しい時代になったものである。 



ビンテージ・ガレージ バックナンバー
5th
シーズン
2018年4月号 第23回 Team Lotus Type49B 1969 (エブロ 1/20)
4th
シーズン
2017年2月号 第22回 ベンツW154-M163仕様  (W163 (1939) リバイバル 1/20)
2017年1月号 第21回 ダットサンSR311 フェアレディ (フジミ(旧日東) 1/24)
2016年12月号 第20回 スカラブ Mk.4(モノグラム 1/24) 
SCARAB Mk.4 (MONOGRAM 1/24)
2016年11月号 第19回 マクラーレンM8A 1968(タミヤ 1/18)
  Mclaren M8A (TAMIYA )
3rd
シーズン
2016年2月号 第18回 ポルシェ356Aスピードスター (トミー 1/32)
PORSCHE 356A SPEEDSTER(TOMY 1/32)
2016年1月号 第17回 ブガッティT55スーパースポーツ(バンダイ 1/20)  
Bugatti model 1932 type 55 Super Sport (Bandai 1/20)
2015年12月号 第16回 フェラーリ 250 テスタロッサ(ハセガワ 1/24)
Ferrari 250 Testa Rossa (Hasegawa 1/24)
2015年10月号 第15回 シトロエン DS19 (エブロ 1/24)
CITROEN DS19 (EBBRO 1/24)
 
2015年9月号 第14回 フォルクスワーゲン カルマン・ギア 1963年型 (GCIクレオス 1/24)
 Volkswagen Karmann Ghia 1963
2015年8月号 第13回 メルセデス ベンツ 300SL (タミヤ 1/24)
Mercedes Benz 300SL (Tamiya 1/24)

2nd
シーズン
2014年12月号 第12回 オースチン ヒーレー 100-6 (レベル1/25)
AUSTIN HEALEY 100-SIX (Revell 1/25)
2014年11月号 第11回 リンカーン・フューチュラ(レベル1/25) 
LINCOLN Futura (Revell 1/25)
2014年10月号 第10回 メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)
MERCEDES-BENZ540K (Monogram 1/24)
2014年9月号 第9回 デユーセンバーグ・モデルSJ(モノグラム1/24) 
DUESENBERG SJ (Monogram 1/24) 
2014年8月号 第8回 ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン 1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16 )
2014年7月号 第7回 アルファロメオ2300 トゥーリング(1932)(ブラーゴメタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18)
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


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