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誌上個展

F-105D サンダーチーフ (トランペッター 1/32)

by 田口博通 Hiromichi Taguchi




はじめに
 3年ぶりの「Bigキット作り倒し」コーナー再開です。webmodelers創刊当初、 2009年2月創刊号から2010年1月にかけて全12回の「Bigキット作り倒し」という連載コーナーがありました。
しかし、さすがに 完成品の置き場所に困り、中断していました。
  今年の4月号でコンソリデーテッドPBY-5Aカタリナ (モノグラム1/48)、雷電21型 (ハセガワ1/32)という2作品のご寄稿がありまして、また、このコーナーを再開することにいたしました。 皆様も BIGキットを心置きなく作り倒して ご遠慮なく ご寄稿ください。

BIG KITで筆塗りに挑戦

 さて、1/32のジェット機の銀塗装を筆塗りでやってみたいというほとんど妄想に近い願望は以前からありました。 
 塗装方法には昔ながらの筆塗りと、綺麗に簡単に塗れる吹き付け(缶スプレー、エアブラシ)の2方法がありますが、筆塗りの利点は、金属外版表面の情報量が エアブラシに比べて 圧倒的に多いことです。ですので、大味になりがちの大型モデルには最適と思われるのです。
 しかし、筆塗り作業にはエアブラシの数倍の時間がかかりますし、筆ムラが残るのがイヤです。 高額な大型モデルほど綺麗に失敗せずに作りたいのは人情ですので、失敗するリスクの大きい筆塗り塗装は自然と敬遠されます。プラモ歴ウン10年となってしまった筆者も32現用機を筆塗りは とてもとても恐れ多くて、今までやったことがありませんでした。
 しかし、だからこそ一度はやってみたい! 完成したらどんなになるんだろうとその妄想がどんどん膨らみます。 
  それを5月の静岡合同作品展をよい機会に思い切って実現してみることにしました。
 で、どうせやるならと、32ジェット機では 最大のプラモデルであろう トランペッターのF105 サンダーチーフを選択することにしました。

 実は銀塗装の筆塗りについては、昨年からミラージュⅢC(アカデミー 1/48)、飛燕 (ハセガワ 1/48)MIG- 17 (ホビーボス 1/48) 、と習作を重ねてきました。今年3月には、トラペ72のF105Dを完成(下写真)したのですが、きれいに塗り過ぎてしまったのか、クラブの例会に持ち込んでも、こちらから言わなければ 誰にも筆塗りと気づいてもらえず、筆のタッチを残す困難さを感じました。

 それを教訓に、今回の1/32サンダーチーフでは少し荒く筆のタッチを残し、完成させることにしました。 筆塗りと吹き付けの区別がつかない状態をゼロのレベル、濃厚に筆塗りしエナメル黒でパネルラインにスミイレする状態をプラス1とすると、今回の目標到達点はマイナス1となるでしょうか。

トラペ 1/72 F105D 銀塗装を筆塗りしています。のっぺりとしている。


こちらは 今回完成した 1/32 銀 筆塗りのサンダーチーフ

製作

 5月連休に作り始めました。トランペッターの1/32は 図体が半端なく大きいだけで、構成はそう72、48と変わりません。
 エンジンや操縦席、機銃、レーダー、武装パーツの部品点数が多いのですが、はっきり言って、どれも人に見せられるほどのディテールではありません。そこに凝っていると静岡の合同作品展には到底間に合いません。今回の主題は筆塗り塗装なので、追加工作は行わず、閉じてしまうことにしました。
 胴体に操縦席とエンジン、下面爆弾庫、前脚庫を組み込んで左右を接着します。 エンジンと爆弾庫が胴体の補強を兼ねていますので、無塗装でも組み込んでおく必要があります。
また、前脚基部が胴体接着後では組み込めなくなるので、しかたなく前脚基部は脚庫に組み込んでおきます。
 機首のオモリは これも半端なく大量に必要です。脚がぐらぐらして弱いため、心配ですが、シリモチをつくよりはましなので、油ネンドを大目に入れておきました。
 
 さて72を作る際に経験したことですが、コクピットのグレアシールドの高さが高く、パイロットが前を見ることができません。
 外国のサイトをあさってみると、4mm高さを低くする必要があると作例が出ていました。
それを参考にグレアシールド下部を4㎜削り落としました。合わなくなった部分はプラ版でふたをしておきます。
計器板も同様に4㎜分小さく加工する必要があります。
 
 主翼は各部が可動できるようになっていますが、スラットは前縁断面が全く違うため、可動をあきらめ、固定しました。フラップのみ可動としました。
胴体左右接着前、緑色は油ねんどのおもり
グレアシールドは4㎜ 低くする。

筆塗り塗装

 銀塗装ですので 下塗りを黒で行います。サンダーチーフの銀塗装というと ナチュラルメタルでなく、いぶし銀のような艶が消えたシルバーのイメージが刷り込まれているので、MrカラーNo33艶消し黒を全面に筆塗りすることにしました。
 筆は細い洋筆を用いました。多少 表面の成形油ではじかれますが、3回ほど強引に塗ればなんとか下塗りが終わりです。 胴体が50cmを越す大きさなので、取り回しが大変でした。
 注意点は下塗りの筆の最後の方向を銀塗装のヘアラインの方向に合わせることです。胴体は上から下へ、主翼は前から後ろへということになります。大きいので下塗りだけで丸一日を費やしました。
 上塗りの銀はMrカラーのNo8銀を用い、面相筆で塗ってゆきます。
筆の方向は右斜め、左斜め、そして最後に金属外版のヘアラインの方向へと3回程塗装しました。かなり時間がかかりますが、辛抱のよい訓練。
 注意点は 下塗りを綺麗に銀で塗り隠さずに、部分的に艶消し黒の下地が少し透けて残ってもよいことにすることです。
人情として 綺麗に仕上げてしまいたい気持ちがありますが、今回はマイナス1が到達点のため、あえてそれを抑える勇気が必要です。やりすぎは禁物。綺麗の対局にありますが、味を残します。
 後は、大味さを避けるために部分的に外版の塗装色を変えて塗装しておきます。たとえば 可動翼、桁上の外版、補強板などです。
艶消し黒で下塗り。

筆のタッチと下地の艶けし黒が少し残るように荒目に塗装した。


大味さを避けるために、控えめに 部分的に外版の塗装色を変えておく。



同様に、オリーブドラブのアンチグレア塗装、機首レドームのつやけし黒塗装も マスキングテープを用い、筆塗りします。 右斜め、左斜め、最後に胴体の上から下へと3回 筆の方向を運んでいます。

胴体後部 オリーブドラブで塗装。 

機首防眩塗装、オリーブドラブを筆塗し、片側のマスキングテープを外した所、

マーキング

 キットの指定塗装はベトナム迷彩のため、銀塗装用のデカールは付属していません。しかし、32のF105D用のデカールなどおいそれと入手できるはずもありませんので、マーキングも手書きとなりました。
国籍星マークは大きいので意外と簡単です。

モノグラムの1/48のデカールをコンビニのカラーコピーで、1/32に引き伸ばし 型紙にします。後は以下の工程のごとくです。
 文字、数字類は同様に手書きをしたかったのですが、合同作品展まで残念ながら時間切れとなり、不本意ながら、A-ONEのタトゥシールを使い、インクジェットプリンターで印刷することにしました。
このタトゥシールは水で写し絵をするのですが、慣れないこともあり、インクがにじんだりゆがんだり四苦八苦しました。
 国籍マーク 手書き
1) 型紙をマスキングテープの上にスティック糊を使って貼りつける。 2) 外形に切り抜き、白で塗装する。

3)また、同様にマスキングテープと型紙を貼り、白赤の部分は残し青の部分を切り取る。青を筆で塗装。

4)赤の部分のマスキングを切り抜き、赤を塗装。
これで 国籍マークは完成です。

文字類は時間切れのため不本意ながらタトーシールに印刷した。

完成

 脚部品や小物をつけて完成となりますが、50cmを超す胴体全長はさすがにでかく迫力に圧倒されます。
 筆塗りの荒い部分が残っていますが、所属するクラブの方たちの評価は それが味となってよいのではないか というおおむね好評な評価でした。 エアブラシではのっぺらぼうになりがちですし、へたにシャドーをつけるといやらしさも残ってしまいます。その点 筆塗りは外版をなめまわすように眺めて行っても破綻がような気がします。
 トランペッターの32ジェットの外形は どれも少し バランスが崩れているようにも感じますが、実物も大きいので、カメラのレンズのゆがみもあることでしょう。真偽は私もよくわかりません。
細かいことを言わなければ 「できたもの勝ち」でしょう。 
 さて、これからの課題はというと、マイナス1を到達点に完成したものの、眺めていると 塗り足りない所が目につき、再度 筆を入れたい衝動にかられているのが正直なところです。この衝動をずっと抑えるか、それとも いつか 感じ方が変化し、もう少し筆を加えるのか 芸術家?の心境ではあります。 





静岡ホビーショー ひやめし会のブースに展示


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Vol 56 2013 June.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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