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誌上個展

BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 

by 田口博通 Hiromichi taguchi

   Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 
どうぞあわせてお楽しみ下さい。
第1回、第2回で登場したのは モノコック化された後の60年代F1レーシングカーでしたが、第3回で登場するのは 1960年代初頭のパイプフレームの時代まで遡って BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 。実はこのキットはプラモデルで唯一、内部の鋼管スペースフレームまで再現した貴重なレーシングカーキットなのです。 

BRABHAM F-3 (エレール  1/24) の鋼管スペースフレーム



実車について
 1959,60年にクーパーF1で世界チャンピオンになったジャックブラバムは、F-1でもう一度、1966年に ブラバムBT19に乗って4度の優勝を遂げ、世界チャンピオンになっている。このバラバムBT19は自身の設立したMRD社で設計した鋼管スペースフレームシャーシーで旧式ながら信頼性の高いマシンだった。
 
 一方、1964年から実施されたF-3レースでは 1リットルの生産型エンジンを単座ボディに積んだフォーミュラーカーが使われたが、このF-3に投入されたのが ブラバム・コスワースBT-17、18、21である。
 シャーシーはF-1のBT19同様、簡潔な鋼管スペース・フレーム構造で、強度が高く、かなり無理な操縦にも耐えるものだった。
 1968年にヨーロッパF-3レースを転戦した生沢徹のマシンもこのブラバムF-3(BT21B)だった。生沢は、イギリス/欧州F3で計8勝しているが、ヨーロッパで日本人が優勝したのも初めてのこと、まさに先駆者といえるだろう。

1リッター コスワースエンジン


キットについて

 エレールのキットは日本ではユニオンから発売されていた時期があり、製作したのはそのユニオンのもの。絶版ではあるが、店頭在庫はまだちらほらとあるようだ。筆者は静岡ホビーショーのフリマで安く購入した。
キットには生沢徹のナショナルカラー日の丸7番と、クリス・アーウイン仕様のグリーン塗装のデカールが付属している。
 このキットが凄いのは鋼管スペースフレームのシャシーが完全に再現されていることで、カウルを外すと見れる構造になっている。
また、ショックアブソーバーには金属スプリングが使われ、ラジエターホースとブレーキホース用ににビニールコードが付属し、1Lコスワースエンジンのプラグコードも付属しているというこだわりのキットだ。
最上級者向けと注意書きされているように、組み立てには多少技術もいる。
しかし、説明書が親切なので、プラ用の流し込み接着剤の他、スコッチの多用途強力接着剤(ビニールコム系)と瞬間接着剤も用意して、落ち着いて順序通り、組めば なんなく完成することができる。


箱絵


製作

シャーシー
 鋼管フレームシャーシーは プラスチックのシャーシー貫通材に前後バルクヘッドを組み、ヘッドレストと計器パネルを中にはさんで、横部材で組みつけるという構造になっている。一度、各部材をスコッチの多用途強力接着剤で仮止めして、瞬間接着剤で固めれば楽に組めると思う。
そこに、前後のサスペンションを組み込んでいく。
フレームの 塗装は接着剤が完全に固まり、強度が確保された後に 面相筆でシルバーに塗っていくのが現実的だ。




エンジンと リヤサスペンション ラジエターなど
 コスワースエンジンは リヤにむき出しに搭載される構造で、しっかりと後部バルクヘッドに接着することが重要だ。
 リヤサスペンションで問題になるのが、組んだ後の4輪接地で、ドライブシャフトを仮組しておいて、タイヤも組んだ最後に4輪が接地するように調整し、流し込み接着剤で固定するのがよい。
ラジエターは説明書ではエンジンより前に取り付けるように指示されているが、支柱が弱いので組み立て中に壊さないように最後に取り付ける方がよいだろう。ラジエターホースには付属のビニールコードではなく、ガンダム用にモデラーズから発売されている細スプリングを用いて、パイプシャーシーにはエナメル線でしばっておいた。

 

 これに ボディを塗装して かぶせれば 完成となる。が、今回は見事な 鋼管スペース フレームなので、ボディ無しとした。  内部の鋼管フレームを完全再現する このような エレールの 発想は 日本のメーカーでは見られないものだ。車社会が根付いたヨーロッパならではの製品 といえよう。



BRABHAM F3 その後

 第2回で述べたように F1レーシングカーは60年代にパイプシャーシーからモノコック構造に大幅な進歩を遂げるのだが、当時のブラバムのレーシングカーは パイプシャーシー時代の最後を飾るものとなった。
 実は、ブラバムは F-1で3度目の優勝を遂げた 1966年は意図的に パイプシャーシーを採用したといわれている。老練なブラバムは 他チームが 新しいモノコックシャーシーと新しい3リッターエンジンの導入での初期トラブルでもたつくと予想し 旧式ながら信頼性の高いマシンを作り上げれば、確実に勝てると踏んだのである。
 その作戦が見事に功を奏して、混乱の66年シーズンで4勝をあげ、勝ち抜いた。その発想は決して時代遅れではなかったのだ。 
 レーサーの登竜門といえる F-2,F-3でも、ブラバムは手荒い操縦にも耐える強度の高い堅実な鋼管スペースフレームのシャーシーを製品として送り込んだ。ヨーロッパだけでなく、日本でもブラバムのマシンを鈴鹿サーキットが大量に購入し、それがプライベーターに放出され、幾多のレーサーを育てた経緯がある。その一人が生沢徹だったわけである。
 一時代を築き、F-1,F-3の発展に貢献したブラバムに敬意を表したい。

 ブラバムチームは1992年に消滅したが、ジャック・ブラバムの子供、デビッド・ブラバムは1965年に生まれ、やはりレーサーとなり 1989年にイギリスF-3でチャンピオンを獲得している。その後も2,009年にALMSのLMP1クラスのシリーズチャンピオンに輝いている。やはり、カエルの子はカエルか。


ビンテージ・ガレージ バックナンバー
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


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Vol60 2013 October    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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