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CARRIER AIR WING FIVE

CVW-5

Part23                                  Photo. U.S. NAVY

by Kiyoshi Iwama

Tip of the Sword” 、CVW-5のハンガーに描かれた彼らのスローガンである。空母を守る剣の先は、彼ら自身であり、「剣の先の如く鋭くあれ」と戒めている。またそれは遠く母国を離れ、太平洋の西岸に置かれた剣の先をも意味するように思われる。海外を拠点とする米海軍唯一の空母航空団としてCVW-5が厚木基地に本拠地を置いて、35年が過ぎた。その間、飛行隊の編成や使用する航空機も大きく変わり、その年月の長さを感じさせる。もう少しで在日40年を迎えるが、そのとき彼らは、その記念日を岩国基地で迎える。
我々飛行機ファンを大いに楽しませてくれたCVW-5であるが、厚木基地での活動も残り少なくなった。これを機会に、CVW-5のこれまでを振り返ってみたい。

これまでのあらすじ

資料記事
第22話 VF-154 “Black Knights”、最後の戦い
第21話 テロとの戦い、始まる
第20話 インディペンデンスからキティー・ホークへ
第19話 イラクを睨む
第18話 ミッドウェイからインディペンデンスへ
第17話 湾岸戦争とミッドウェイの退役
第16話 ホーネット時代の到来
第15話 Midway Magicとファントム時代の終焉
第14話 再び平和に
第13話(Rev.B) 日本へ 
第12話(Rev.C) ヴェトナム戦争(後編)
第11話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-3)
第10話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-2)
第9話 ヴェトナム戦争(中編-1)
第8話 ヴェトナム戦争(前編)
第7話 東西冷戦、朝鮮戦争後
第6話 朝鮮戦争(後編)
第5話 朝鮮戦争(中編)
第4話 朝鮮戦争(前編)
第3話 朝鮮戦争勃発
第2話 ジェット時代の夜明け
第1話 誕生

第23話 スーパー・ホーネットの時代へ

 2003年5月、CVW-5が厚木に戻ったものの、かってのような基地公開もなく、関心はVF-154の本国帰還と、新任部隊の話題であった。しかしVF-154の後任は既にスーパー・ホーネットの複座型、F/A-18Fを装備するVFA-102に決まっていた。VFA-102 “Diamondbacks”はこれまで大西洋艦隊の空母航空団に所属していたが、3月に実施されたF-14BからF/A-18Fへの機種改変に伴い、太平洋艦隊の空母航空団への異動が決まり、バージニア州のNAS Oceanaから西海岸のカリフォルニア州のNAS Lemooreに移動している。この時点では正式なCVW-5への異動命令は未発令であったが、リムーアでの訓練に励むVFA-102のF/A-18Fの一部機体には既にCVW-5の所属を示す、「NF」のテイルレターと”USS Kitty Hawk”の空母名が記載されており、異動は時間の問題であった。

反面、日本の空からF-14が消える時間もカウントダウンの段階にあった。VFA-102は、太平洋艦隊戦闘攻撃航空団に属し、F/A-18E/Fへの転換飛行訓練を務める艦隊即応飛行隊VFA-122 “Flying Eagles”に次ぐ、F/A-18Fの受領飛行隊で、その飛行隊がCVW-5に配属されるのは、VF-154のF-14Aの老朽化が海軍内部でも問題視されていたからである。また米海軍内ではVFA-27のF/A-18Eへの転換も計画されており、機内搭載燃料が多く、バディー空中給油ポッドが搭載可能なスーパー・ホーネットの配備が進むと、現在その任についているS-3BもCVW-5から消える日もそう遠くないと推測された。

またこの時期、空母の新旧交代も行われており、7月12日には、ニミッツ級原子力空母の9番艦となるCVN-78 “USS Ronald Regan”がバージニア州ノーフォークで就役式が執り行われ、8月7日にはキティー・ホーク級の2番艦CV-64”USS Constellation”の退役式がカリフォルニア州サンディエゴで行われている。CVW-5の母艦であるキティー・ホークが現役を務めるのも、時間の問題となってきた。

国内では8月23日と24日、炎天下の横田基地で恒例の日米交流の基地祭、”Friendship Day”が開催された。CVW-5からも久しぶりに5機もの機体が展示され、その中には2機のVF-154のトムキャットの姿が見られた。1機は色つきのCO機(161276/NF101)でもう1機はノーマーク機(Bu.No.の161293からすると元NF103)であった。そしてCO機の横にはVF-154のマスコットの騎士像が立っていた。



 横田基地のFriendship dayに展示されたVF-154のF-14A(161276/NF101)とマスコットの騎士像
写真: 筆者撮影(2003年8月24日)



 こうした展示はいかにも最後のお披露目という雰囲気を醸し出していたが、果たして24日の外来展示機の帰還に際し、エプロンでエンジンをかけた2機のF-14Aは、滑走路に向かう前に、観客に向けお辞儀をするかのようにニーリングをして見せた。お別れの挨拶である。そして離陸した2機は翼を大きく振り、観客に最後の雄姿を見せ、厚木へと飛び去って行った。

それからVF-154が厚木を去るまで、丁度1ヶ月であった。曇り空の9月24日、午前10時にNF100、NF101、NF103、NF105、NF106の6機が、そして11時にNF107、NF110、NF111、NF112、NF113の5機が、CVW-5司令官パトリック・ドリスコール大佐らの見送る中、バージニア州のNAS Oceanaに向けトランスパックへとR/W01を飛び立っていった。VF-154は、NAS オシアナに到着後F-14を手放し、カリフォルニア州のNAS Lemooreへ移動、F/A-18Fを装備するVFA-154へと改編された。



 2003年9月24日、帰国のため厚木のR/W01を離陸するVF-154のF-14A(161866/NF100)
出典: US Navy Official Photo Archive(030924-N-5961C-001)



 10月1に入ると、横須賀では空母キティー・ホークが約5カ月間をかけたオーバーホール終え、塗装も塗り替えられた巨体を現し海上公試の準備に取り掛かっていた。今回のオーバーホールは横須賀配備後の初のオーバーホールで、しかも今後新しい航空機(F/A-18E/F)の配備を受けるための設備の更新なども含まれたため、大規模な改修となった。飛行甲板についても約9割の面積を張り替えている。そして10月13日に太平洋上での海上公試に向かい、CVW-5の空母適合性認定(CQ: Carrier Qualification)も終え、10月23日に横須賀に帰港した。そして11月1日、秋の日米合同演習”ANNUALEX 2003(15G)”へ参加するため、横須賀を出発した。搭載されるCVW-5は、VF-154に替わるVFA-102がまだ厚木に到着していないため、残る飛行隊を載せての展開となった。このときのCVW-5の編成を表23-1に示す。



 5カ月間のオーバーホールを終え、ドックから引き出されたCV-63空母キティー・ホーク
出典: US Navy official Photo Archive(031013-N-2101W-001)



表23-1  2003年11月1日~12月12日の西太平洋展開時のCVW-5編成

 


 Hawk/Fiveチームは、フィリピン海に向かい、その後東シナ海に戻り11月13日から海上自衛隊との合同演習”ANNUALEX 2003”に参加した。演習では日米の協力による指揮統制、制空、制海の共同作戦演習が展開された。ANNUALEX 2003終了後、Hawk/FiveEチームはグアムに向かい、11月26日から30日までアプラ港に停泊し、束の間の休日を楽しんだ。グアムを離れた後は横須賀に向かい、CVW-5の艦載機群は12月10日に厚木へフライインし、空母キティー・ホークは12月12日に横須賀に帰港している。

Hawk/Fiveチームが演習のため洋上展開していた11月13日の夕暮れ、厚木基地に4機のF/A-18Fがトランスパックされてきた。VFA-102のNF/112(165892)、NF/113(165893)、NF/114(165890)、NF/115(165895)が第1陣として中継地のハワイから米空軍の空中給油支援を受け、厚木へと飛来した。垂直尾翼には、飛行隊のニックネームに因んだガラガラヘビの図柄のマークと「NF」のテイルレターが鮮やかに描かれていた。残る9機のF/A-18Fは洋上展開からCVW-5が戻った直後の12月12日に6機が、そして翌13日に3機が到着し、飛行隊定数の13機が勢ぞろいした。



 2003年11月13日、関係者の迎える中、厚木基地にランプインするVFA-102のF/A-18F(165892/NF112)
出典: US Navy Official Photo Archive(031113-N-3503M-001)



 配備されたF/A-18Fはロット24に当たるモデルで、AESAレーダは装備しないものの、新型のターゲティングFLIRポッドAN/ASQ-228 ATFLIRや統合ヘルメット装着式目標指示システム JHMCSとこれと連動し前方180°という広アスペクト角での攻撃能力を有するAIM-9Xサイドワインダー・ミサイルの搭載が可能となっている。さらにこの他、F/A-18FはSHARP EO/IR戦術偵察ポッドや空中給油用のバディーポッドが搭載可能で、VF-154に替わっての戦術偵察ミッションや、近く解隊が計画されているVS-21に替わっての空中給油ミッションに対応することになる。これでCVW-5は戦闘・攻撃飛行隊が全てVFAで構成される航空団へと変身を遂げた。また在日米海軍からも、VFA-27をF/A-18E飛行隊に改編するとの発表があり、近い将来、CVW-5の全戦闘・攻撃飛行隊がF/A-18E/Fで占められる時代の到来を思わせた。

年が明けた2004年1月8日、空母キティー・ホークは定修後の海上公試のため横須賀を離れる。翌日には横須賀に戻り、春の洋上展開への準備にかかった。そして2月18日、キティー・ホークと随伴艦が横須賀を出港する。CVW-5の厚木からのフライオフは翌2月19日から始まった。この日のイベントは何と言っても、VFA-102のF/A-18Fのキティー・ホークへの初着艦である。太平洋上での12時29分、後席にCVW-5の司令官 Joey Aucoin大佐を乗せ、VFA-102の飛行隊長Stephen Higurea中佐が操縦するF/A-18F(/NF115)がNo.3 アレスティング・ワイヤーをとらえ、キティー・ホークの飛行甲板に降り立った。第7艦隊の航空兵力が新たな時代を迎えた瞬間である。このときのCVW-5の編成を表23-2に示す。



 2004年2月19日、空母キティー・ホークに最初に着艦したVFA-102のF/A-18F(165895/NF115)
出典: US Navy Official Photo Airchive(040219-N-5464G-001)



表23-2  2004年2月18日~5月24日の西太平洋展開時のCVW-5編成

 


太平洋上航行中の2月26日、Gordon R. England海軍長官の表敬訪問を受ける。ゴードン長官は格納庫にて、本国を離れて極東で活動する将兵に対し謝意を表するとともに、Hawk/Fiveチームのアジア-太平洋地域における平和と安定への貢献を讃えた。

その後、訓練を進めながら東シナ海に入り、3月6日に香港に入港する。Hawk/Fiveチームの香港寄港は2002年11月以来、1年半ぶりの訪問となった。香港を3月10日に出港した、Hawk/Fiveチームは南シナ海を北上、韓国の釜山を目指した。釜山では5日間停泊し、3月19日に出港、再び日本海から東シナ海、南シナ海を抜け、4月3日にシンガポールに到着、チャンギ海軍基地に入港した。シンガポールでは4日間の休暇を楽しみ、4月7日にオーストラリアに向け出港、22日にオーストラリアのフリーマントルに入港するまでの間、空母戦闘群としての戦闘能力維持のための訓練を実施した。フリーマントルでは5日間の休息を取り、4月26日、横須賀に向けフリーマントルを後にする。航行中の4月29日、空母キティー・ホークは43歳の誕生日を迎えた。海軍の現役中最古参の空母はさらに1歳年老いたことになる。
 



 CVW-5の艦載機を飛行甲板に並べ、オーストラリアのフリーマントル港に入港する空母キティー・ホーク
出典: US Navy Official Photo Archive(040422-O-9999B-011)



 そして5月7日、VFA-27のパイロット達は、新しいF/A-18Eスーパー・ホーネットへの転換訓練に本国へ旅経つため、一足先に空母キティー・ホークを離れた。この際、VFA-27のF/A-18C(N)の機体はVFA-192に引き渡され、VFA-192はF/A-18C(N)15機体制となった。またVFA-192の機体はVFA-195と岩国に駐留するVMFA-212へ、そしてVFA-195からも交換した機体をVMFA-212へ引き渡すことになった。岩国には5月9日に9機のF/A-18C(N)が到着しており、5月7日にキティー・ホークを離れたVFA-27の機体は9機で、今回のクルーズに参加していたVFA-27の機体が11機あったことを考えると、VFA-27のパイロットは9名が岩国から転換訓練の行われるNAS Lemooreに向かい、残るメンバーは厚木に戻った後出発したと推測される。

厚木では5月18日頃からフライインする機体が見かけられたが、帰還ラッシュは22日となった。上に述べたような機体交換が行われたこともあり、CVW-5の厚木フライイン時にはノーマークのF/A-18Cを多数見ることになる。また空母キティー・ホークはそれより2日後の5月24日に、随伴艦と共に横須賀に帰港した。

CVW-5が厚木にフライインした日から約20日後の6月15日、マーキングを消されたVS-21の2機のS-3Bバイキング(NF703/160605 & NF706/158876)が、厚木を飛び立ち本国へ帰還した。VS-21の解隊を前にしての帰還であるが、まだ定数の7機が残っているため、当面の運用に支障ないものと判断されたものであろう。

そして2004年7月19日、空母キティー・ホークとCVW-5は”Summer Pulse 2004”と名付けられた演習に出発する。この演習は、世界中で発生の可能性のあるテロ等の脅威に対し、世界の各所に展開する米海軍の空母戦闘群が、何処の区域からもそれに対応しうる能力保持のために設けられた大規模なもので、今回が最初の演習となった。2004年の演習では、世界の5つの区域に散らばった米海軍の7つの空母戦闘群が同時に参加する形で行われ、キティー・ホーク戦闘群はCVW-5とともに西太平洋に展開した。このときのCVW-5の編成を表23-3に示す。

表23-3  2004年7月19日~9月7日の西太平洋展開時のCVW-5編成




 ミッションを終え、キティー・ホークに帰投するVS-21の2機のS-3B(NF700 & NF707)。今回が最後のクルーズとなる。(2004年8月6日)
出典: US Navy Official Photo Archive(040806-N-0000X-001)



 Hawk/Fiveチームは“Summer Pulse 2004”の演習後、中部太平洋に展開していた空母ジョン・C・ステニスの戦闘群と合流し、硫黄島から東に600海里離れた海域で8月8日より8月15日まで、空海統合戦闘訓練”JASEX 04”(Joint Air and Sea Exercise 2004)を実施する。

JASEX 04を終えたジョン・C・ステニス戦闘群は西海岸のサンディエゴへ、そしてキティー・ホーク戦闘群は小休止のためグアムへと向かう。8月19日にグアムに到着、アプラ港に係留されるが、21日には大型の台風がグアム島を直撃する恐れのあることから太平洋上へ避難することになり、アンダーセン空軍基地に降りていたCVW-5の航空機も母艦へと呼び戻された。その後いくつかの行事もこなし、空母キティー・ホークは9月7日に横須賀基地へ帰還した。一方CVW-5の機体は9月4日に厚木へとフライインしている。

艦載機がフライインした後の厚木基地では、VFA-27の機種更新やVS-21の解隊に関係する航空機の移動が目立つようになった。まず、9月9日にはVS-21のS-3B(160136/NF706)1機が厚木を離陸し、本国へ帰還のため、近くを航行中のCVN-74 空母ジョン・C・ステニスへと向かった。また9月20日にはVFA-192のF/A-18C(N)3機(164059/NF301、164041/NF304、164062/NF314)が帰国のため、トランスパックに飛び立った。VFA-192は5月にVFA-27からLot12のホーネットを譲り受け、15機体制になったばかりであった。

そして秋空の晴れ渡る10月2日、カリフォルニア州のNAS LemooreでF/A-18Eへの転換訓練を行っていたVFA-27 “Royal Maces”の第1陣(NF200/165860、NF201/165861、NF202/165862、NF203/165863、NF205/165865、NF210/165870、NF211/165871、NF212/165872、NF214/165868、NF215/165869)の10機がハワイ経由で厚木基地にトランスパックされてきた。VFA-27の定数は13機であり、残る3機(NF204/165864、F206/165866、NF207/165867)は4日遅れの10月6日に到着している。これでスーパー・ホーネット2飛行隊、ホーネット2飛行隊から成るCVW-5の新しい戦闘・攻撃飛行隊の体制が整ったことになる。

一方でCVW-5を去る飛行隊があった。運用機体の6機を既に本国へ帰還させたVS-21 “Flying Redtails”である。VS-21は1991年秋にCV-62空母インディペンデンスとともに来日し、13年間をCVW-5の一員として厚木にホームベースを置いた。当初は対潜水艦作戦飛行隊(Anti-Submarine Squadron)としてのミッションが主であったが、ソ連崩壊でロシア潜水艦の脅威が低下したこともあり、他のS-3飛行隊同様1993年に海上制圧飛行隊(Sea Control Squadron)と改称され、海上脅威監視や空中給油母機等として多用途任務に就いていた。

しかしながらS-3Bの機齢も25年に達し、また対潜任務はSH-60飛行隊に、また空中給油任務もF/A-18E/Fが引き継ぐこととなり、米海軍はS-3Bを退役させることとし、その飛行隊も解隊が進められていた。VS-21も解隊が決まり、いよいよ日本の空からも消え去ることとなった。11月4日、CAG機(NF700)と特別塗装の施されたNF710を前にして、厚木基地内でVS-21の解散セレモニーが開催された。(米海軍におけるVS-21の正式解隊日は2005年2月28日となっている。) そして11月12日、雨の降る厚木基地をVS-21の3機のS-3B(NF700/160123、NF704/160126、NF710/160604)は、関係者が手を振り見送る中をランプアウトし、カリフォルニア州のNAS North Islandを目指して離陸していった。特別塗装の施されたS-3B(NF710/160604)はノース・アイランドからアリゾナ州のデイビスモンサン空軍基地内のAMARC(Aerospace Maintenance and Regeneration Center)へ送られたが、2年後、同州内ツーソンにあるPima Air & Space Museumに贈られ、その美しい姿のまま今も展示されている。

少し時計を戻すが海の向こうの米国では9月7日、もう一つの歴史が閉じようとしていた。CVW-1所属のVF-211”Fightimg Checkmates”に残された最後の5機のF-14Aが、保管のため、バージニア州のNAS オシアナからアリゾナ州デイビスモンサン空軍基地のAMARCへフェリーされた。VF-211は1975年12月以来F-14Aを運用してきた米海軍最後のF-14A飛行隊であ、これで32年間運用されてきたF-14Aが米海軍実戦部隊から姿を消した。



 2004年9月7日、AMARCへ向かう前、NAS Oceana上空を最後のフライバイを見せるVF-211のF-14A
出典: US Navy Official Photo Archive(040908-N-6011D-001)



 年が明けて2005年、空母キティー・ホークは1月11日に横須賀を出港し海上公試に入る。一方CVW-5は厚木や硫黄島でのFLCPを行い、スーパー・ホーネットに更新したVFA-27も加わった。海上公試を終えたキティー・ホークは1月26日に再び横須賀を離れ、CVW-5の空母適合性認定(CQ)を開始した。CQは30日に終了したが、前日の29日の夕暮れ、横須賀から南西に約100海里の海上を航行するキティー・ホーク上で、着艦してきたVFA-102のF/A-18F(NF115/165895)のひっかけたワイヤーが切断、機体は停止できずにそのまま海上に墜落するという事故が起こった。幸いにもパイロットとWSOは緊急脱出し、着水したところをHS-14のヘリコプターに無事救助された。しかし飛行甲板上では、切断されたワイヤーが作業中のグランドクルーに当たり、6名のクルーが重軽傷を負うことになった。



 硫黄島に展開したVFA-27のF/A-18E(2005年1月22日)
出典: US Navy Official Photo Archive(050122-N-1113S-008)



 CVW-5は最新のスーパー・ホーネットを1機失ってしまったが、2月に入ると冬季の西太平洋クルーズが待っていた。空母キティー・ホークが随伴艦と共に2月10日に横須賀を出港、CVW-5の艦載機もこれを追って厚木を離陸し、太平洋時のキティー・ホークを目指した。CVW-5は新しい編成での初のクルーズとなる。このときのCVW-5の編成を表23-4に示す。


表23-4  2005年2月10日~3月28日の西太平洋展開時のCVW-5編成



 Hawk/Fiveチームは日本列島に沿って南下し、西太平洋から東シナ海へと訓練を進めながら航行を続け、2月25日に香港に到着した。ここで3日間停泊し、2月28日に出港、フィリピン海へと向かう。その後は南シナ海、東シナ海、そして日本海に入り3月14日に韓国の釜山に入港する。Hawk/Fiveチームは18日には釜山を出港し、その後日本海で実施された米韓年次合同演習RSO&I and Foal Eagleに参加した。この演習では岩国のMAG-12から参加したVMFA-122のF/A-18Cの動きが目立ったが、CVW-5の各飛行隊も演習に加わり、その力をいかんなく発揮した。演習終了後Hawk/Fiveチームは帰路につき、CVW-5は3月26日に厚木へとフライインし、空母キティー・ホークは28日に横須賀基地へ帰還する。

CVW-5が帰還した厚木基地に、4月6日、ノーマークのF/A-18F(165876)とF/A-18C(164899)がフェリーされてきた。いずれもCVW-5への補充機で、F/A-18Fはウィンター・クルーズ前の事故で失われたVFA-102のNF115の代替機で、VFA-122から回されたものである。またF/A-18Cについては、海兵隊のVMFA-212へホーネットを引き渡し定数割れしていたVFA-195に対する補充機で、VMFAT-101から移転してきた。

補充機を受領し定数の13機に戻ったVFA-102は、この年部隊創立50周年を迎える。1955年7月1日付で創設されたVA-36として創設されるが、同時に既存のVF-102がVA-36に改称されたため、その日にVF-102に呼称変更されている。そして50年、2003年にCVW-5に配属となってその記念する日を厚木基地で迎えることになった。記念日に少し早いが4月15日にその50周年を祝うセレモニーが開催され、報道陣に対し50周年記念塗装が施されたNF102号機が公開された。ウィンドシールドから垂直尾翼の位置まで機体上面が真っ赤に塗られ、垂直尾翼には口を大きく開けたガラガラヘビの描かれたマーキングは一際目立つもので、マニアからも注目を浴びた。



 VFA-102創立50周年記念塗装のF/A-18F(/NF102)が厚木基地内で公開された(2005年4月15日)
出典: US Navy Official Photo Archive(050415-N-1113S-003)



 5月に入るとCVW-5の飛行隊は次のクルーズへの訓練に励んだ。戦闘攻撃以降隊は青森県の三沢基地に展開し、天ヶ森訓練場での射爆訓練を行った。またフライオフが近づくと硫黄島や厚木でのFCLPが行われる。一方空母キティー・ホークも海上公試を終え、5月20日には横須賀に戻った。そして出港への準備を整った5月23日、キティー・ホークは随伴艦を伴い、西太平洋クルーズに向け須賀基地を出港、CVW-5もその後を追った。

Hawk/Fiveチームは6月6日にグアムのアプラ港に入港し、一時停泊の後直ぐにフィリピン海を経由し珊瑚海へと向かう。6月12日に珊瑚海に入ったHawk/Fiveチームは米太平洋軍とオーストラリア国防軍との共同主催による統合演習 “Talisman Saber 2005”に参加した。この演習は、米軍から11,000名、オーストラリアからは6,000名の将兵が参加するという大規模なもので、陸・海・空の米豪作戦部隊が統合作戦訓練を行い、2国間の防衛協力関係の発展と一層の強化を図る目的で実施され、強襲揚陸艦LHD-4”USS Boxer”艦上にオーストラリア陸軍のS-70A-9 ブラックホークが離発艦する光景なども見られた。

演習を終えたHawk/Fiveチームは7月3日にオーストラリアのシドニーへ寄港、6日間停泊し、補給や休養と共に、一般公開などの行事も開催された。キティー・ホークのシドニー寄港は2001年以来のことである。シドニー出航後は珊瑚海での訓練を行いながら、西太平洋へと移動し、7月22日にグアムのアプラ港に入港する。グアムでは第5空母攻撃群(CSG5)の司令官交代式やCVW-5の司令官交代式が行われた。(米海軍では2004年10月1日付で空母戦闘群(CBG: Carrier Battle Group)の呼称を空母攻撃群(CSG: Carrier Strike Group)に変更している。)

CVW-5司令官Joseph Aucoin大佐と後任となるDCAGのGary P. Mace大佐との交代式は、7月26日、アプラ港出港後の空母キティー・ホーク上をJoseph Aucoin大佐の座乗するVFA-102のF/A-18Fがフライオーバーするという形で執り行われた。



 CVW-5司令官交代式で、空母キティー・ホーク上空をフライオーバーする前司令官座乗機
出典: US Navy Official Photo Archive(050726-N-5781F-018)



 8月に入るとグアムの近海で”Orange Crush”演習が行われた。この演習は、CVW-5の作戦機がキティー・ホーク戦闘群の他の艦船とも協調した作戦遂行能力を有しているかを確認するためのテスト演習で、グアムのアンダーソン空軍基地に所属する米空軍機も参加しての演習となった。さらにHawk/Fiveチーム は8月7日には、グアムと沖縄近海の間で行われた”JASEX 05”に参加する。この演習は、極東地域に展開する米軍が西太平洋地域安定への寄与を約するための大規模な空海統合演習で、年に1度実施されている。このため、空軍からはグアムに展開していたB-2を擁する325EBS、沖縄嘉手納の18WG、また嘉手納に展開していたF-15Eを装備する366FW/391FS、E-8Cを装備する116ACWが、そして海兵隊からは沖縄Camp Fosterの第1海兵航空団所属のAV-8Bを装備するVMA-311、F/A-18Aを装備するVMFA-312等が参加した。勿論海軍からも、第7艦隊のキティー・ホーク空母攻撃群の他、強襲揚陸艦LHD-4 ボクサー等の艦艇が参加している。 “JASEX 05”が終わると、Hawk/Fiveチームは帰途に就き、CVW-5は8月18日に大半の機体が厚木にフライインした。一方キティー・ホークは8月20日に横須賀に帰港し約3カ月のクルーズを終えた。

秋になると恒例の海上自衛隊との合同演習”ANNUALEX 2005”が待っていた。空母キティー・ホークと随伴艦は10月24日に横須賀を出港し、CVW-5の航空機を収容した後、太平洋を北上し、11月12日に津軽海峡を通過して日本海へ入った。このときのキティー・ホーク攻撃群の陣容はCV-63空母キティー・ホーク、CVW-5、CG-62ミサイル巡洋艦チャンセラー・ヴィル、CG-63ミサイル巡洋艦カウペンス、及び第15駆逐艦隊(DESRON-15)であった。”ANNUALEEX 2005”は既に11月9日から始まっており、米海軍からは潜水艦2隻を含め12隻、海上自衛隊からは49隻の艦艇が参加する大規模な演習となった。対空戦、対水上戦などの模擬戦闘も含め実践的な演習が、11月18日まで繰り広げられた。演習中キティー・ホークCSGに海上自衛隊のミサイル護衛艦“こんごう”などの艦船も組み込まれ、両軍のインターオペラビリティーの確認もなされた。また空母キティー・ホークでは航空脅威へのアラート訓練として、4基のカタパルトを同時に使用し、CVW-5の航空機を短時間発艦させる訓練も実施され、7分弱の間に13機の航空機を発進させる実績も残した。



ANNUALEX 2005でのミッションを終え空母キティー・ホークに着艦するVFA-195のF/A-18C(164905/NF400)
出典: US Navy Official Photo Archive(051109-N-3488C-090)



 日米合同演習の後、Hawk/Fiveチームは日本海を離れ太平洋に入り、その後香港のビクトリア港へ入港した。香港を出港した後は、南シナ海、太平洋で訓練を行い、空母キティー・ホークは随伴艦を伴い、12月12日に横須賀へ帰港している。

Hawk/Fiveチームが秋の航海に出た直後の2005年10月29日、日米両政府はワシントンで開催された日米安全保障協議委員会(日本側からは町村外務大臣、大野防衛庁長官、米国側からはライス国務長官、ラムズフェルド国防長官が出席しての、所謂ツー・プラス・ツー会議)で在日米軍の再編について合意した中間報告書(日米同盟:未来のための変革と再編)が発表された。これには、沖縄の負担軽減も含め、多くの合意内容が記載されていたが、CVW-5について空母艦載ジェット機、及びE-2C飛行隊を厚木基地から岩国基地へ移駐させるとあった。

またこの発表に先立ち、米海軍は10月27日に、2008年に退役するCV-63空母キティー・ホークに替わり、ニミッツ級原子力空母を横須賀に配備すると発表する。さらに12月2日、米海軍は、後継艦がCVN-73原子力空母ジョージ・ワシントンであることを明らかにしたのである。
                                 (この章終わり)      


      私のアルバムから
(本章に関連する当時のCVW-5の機体を紹介)





 2003年8月24日、横田基地に展示されたVF-154のノーマークのF-14A機(161293元/NF103)





 2003年8月24日、横田基地に展示されたVAW-115のE-2C(165295/NF600)





 2003年8月24日、最後の公開展示を終え横田基地を離陸するVF-154のF-14A (161276/NF101)





 離陸後大きく翼を振って飛び去るVF-154のCO機(2003年8月24日@横田基地)





 NF101の後を追って横田のR/W18を離陸するVF-154のF-14A(161293元/NF103)





 2003年12月30日、厚木のR/W19を離陸するVFA-102のF/A-18F(165878/NF100)
来日当時CAG機は通常塗装であった





 2003年12月30日、厚木のR/W19を離陸するVFA-102のF/A-18F(165882/NF102)。
飛行隊で唯一カラーマーキングが施されていたNF102





 2004年5月30日、厚木のR/W19に着陸するVS-21のS-3B(160136/NF707)





 2004年7月19日、訓練を終え厚木のR/W19に着陸するVS-21のS-3B(160123/NF700)。
CAG機の派手な塗装が施されている。





 2004年7月19日、訓練を終え厚木のR/W19に着陸するVS-21のS-3B(160135/NF701)。
CAG機ほどではないが、CO機も尾翼と前胴部の稲妻と尾翼のNFのレターが赤で塗られている。



 Home >CARRIER AIR WING FIVE CVW-5 第23話 

Vol61  2013 November.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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