Home >CARRIER AIR WING FIVE CVW-5 第26話 さらば、レガシー・ホーネット


CARRIER AIR WING FIVE

CVW-5

Part26                                  Photo. U.S. NAVY

by Kiyoshi Iwama

Tip of the Sword” 、CVW-5のハンガーに描かれた彼らのスローガンである。空母を守る剣の先は、彼ら自身であり、「剣の先の如く鋭くあれ」と戒めている。またそれは遠く母国を離れ、太平洋の西岸に置かれた剣の先をも意味するように思われる。海外を拠点とする米海軍唯一の空母航空団としてCVW-5が厚木基地に本拠地を置いて、35年が過ぎた。その間、飛行隊の編成や使用する航空機も大きく変わり、その年月の長さを感じさせる。もう少しで在日40年を迎えるが、そのとき彼らは、その記念日を岩国基地で迎える。
我々飛行機ファンを大いに楽しませてくれたCVW-5であるが、厚木基地での活動も残り少なくなった。これを機会に、CVW-5のこれまでを振り返ってみたい。

これまでのあらすじ

資料記事
第25話 原子力空母時代の到来
第24話 “SAYONARA” Kitty Hawk
第23話 スーパー・ホーネットの時代へ
第22話 VF-154 “Black Knights”、最後の戦い
第21話 テロとの戦い、始まる
第20話 インディペンデンスからキティー・ホークへ
第19話 イラクを睨む
第18話 ミッドウェイからインディペンデンスへ
第17話 湾岸戦争とミッドウェイの退役
第16話 ホーネット時代の到来
第15話 Midway Magicとファントム時代の終焉
第14話 再び平和に
第13話(Rev.B) 日本へ 
第12話(Rev.C) ヴェトナム戦争(後編)
第11話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-3)
第10話(Rev.C) ヴェトナム戦争(中編-2)
第9話 ヴェトナム戦争(中編-1)
第8話 ヴェトナム戦争(前編)
第7話 東西冷戦、朝鮮戦争後
第6話 朝鮮戦争(後編)
第5話 朝鮮戦争(中編)
第4話 朝鮮戦争(前編)
第3話 朝鮮戦争勃発
第2話 ジェット時代の夜明け
第1話 誕生

第26話 さらば、レガシー・ホーネット

 2009年の年末になるとVAW-115のE-2Cにもノーマーキングの機体が出現し始めた。これはVAW-115が使用していたE-2C グループII(以降G2と称す)の機体を、E-2C Hawkeye 2000(以降HE2Kと称す)へと更新するための処置であった。これまでCVW-5によって運用されていたE-2C G2に比べると、E-2C HE2Kは、捜索レーダをレーダ探知距離の長いAN/APS-145に換装している他、データリンクの性能向上によって、他機、あるいは艦船との情報共有が可能となり、戦域における情報の要として作戦をコントロールする能力を備えている。同様にネットワーク・セントリック・ウォーフェア―能力の強化されたスーパー・ホーネットBlock 2の配備と相まって、CVW-5にとってはタイムリーな配備となった。




離日直前の1月5日、ノーマークでR/W01を離陸するVFA-102のF/A-18F(165894/NF100)
写真: 筆者撮影(2010年1月5日)



 年が明け、まだ正月気分も抜けない2010年1月15日と16日の早朝、VFA-102のF/A-18F 13機とVFA-27のF/A-18E 4機が、本国へのトランスパックのため、厚木を飛び立った。前話に書いたように、VFA-102はBlock 2のF/A-18Fへの更新であり、一方のVFA-27は同一ロット機との交換となる。彼らが新しい機体を携えて厚木に戻ってきたのは1月も末の28日であった。生憎の雨の中、FA-18E/F 合計17機が、3陣に分かれて厚木に到着した。

 VFA-102がBlock 2のスーパー・ホーネットを持ち帰って約1か月後、厚木基地ではVFA-102、VFA-27、VFA-115、VFA-195の戦闘攻撃飛行隊に対する年に一度の海軍兵器学校主催の戦術戦闘訓練SFARP(Strike Fighter Advanced Readiness Program)が実施された。CVW-5に対しては太平洋地区を担当するカリフォルニア州リムーア海軍航空基地にある太平洋戦闘攻撃兵器学校(SFWSP: Strike Fighter Weapons School Pacific)が担当しているが、他のプログラムと重なったこともあり、今回は大西洋地区からSFWSL(Strike Fighter Weapons School atLantic)の教官が来日し、各飛行隊のアヴィエイター達を指導している。基本的には空対空、空対地の戦闘シナリオに沿って訓練が実施されたが、仮想敵機を演じるクルーにとってもその効果は大きいものであった。また新しくなったBlock 2のスーパー・ホーネットではその能力も大きく向上しており、それに見合った訓練も実施された。

 また、厚木基地でSFWSPが進められている最中の2月28日、VAW-115もCVW-11のVAW-117 “Wallbangers”との機体のスワップを始めた。まずこの日VAW-115のE-2C 1機(164137/NF601)が厚木を離れ、沖縄南方海上を本国に向かって航行するCVN-68、空母ニミッツへと向かった。一方、空母ニミッツからは、VAW-117の4機のE-2C(165817/NH600、165827/NH601, 165828/NH602, 165826/NH603)が母艦を飛び立ち厚木を目指した。しかしNH603はトラブルに見舞われ、沖縄の嘉手納基地へ緊急着陸、残る3機が厚木へと向かい夕刻に到着している。 




厚木に到着し、VAW-115の地上クルーにより駐機位置へ誘導されるexVAW-117のE-2C HE2K
出典: US Navy Official Photo Archive (100226-N-5019M-003)


 これらの機体は前述の通りE-2C HE2Kである。VAW-117に引き渡される残りの3機のE-2C G2は、翌29日に厚木から空母ニミッツへと向かった。また嘉手納に緊急着陸したE-2C(NH603)は、約1か月後の4月6日に厚木に飛来した。これでVAW-115のE-2CはG2の機体が1機とHE2Kが4機の編成となる。

 桜も満開時期の過ぎた4月10日、厚木基地では恒例の日米親善桜祭りが開催され、基地の一部が開放された。例年の如く、催し物や厚木をホームベースとする航空機の展示が行われ、主催者側の発表によると、約20,000人の来場者があったとのことである。CVW-5の各飛行隊はVFA-27以外は、カラフルなCAG機を展示し、VFA-102のBlock 2のF/A-18F、VAW-115のE-2C HE2K、そしてVFA-192に替わって配備されたVFA-115のBlock 2のF/A-18Eは、本邦初公開となった。







 桜祭りに初公開されたCVW-5の新鋭機。上からVFA-102のF/A-18F Block 2(166915/NF400)、VFA-115のF/A-18E Block 2(166859/NF300)、VAW-115のE-2C HE2K(165817/NF600)
写真: 筆者撮影(2010年4月10日)



 桜祭りが終わると、ディプロイメントへの準備が始まる。CVW-5の各飛行隊は5月5日から5月15日までの間、硫黄島でFCLPを行い、空母展開時の離発艦訓練を繰り返した。一方横須賀では5月11日、4カ月の定期修理を終えた空母ジョージ・ワシントンが海上公試のため、横須賀基地を出港する。公試を終えて5月14日に帰港したジョージ・ワシントンは5月18日の朝、CVW-5との空母適合性試験(CQ)を行うため、随伴艦と共に再び横須賀を出港した。CQは西太平洋上で行われた。なおその間の5月29日、ジョージ・ワシントンの艦上で第70任務部隊(CTF-70)の司令官交代式が行われている。また、同じ日、CVW-5の主要部隊移駐が決定している山口県岩国基地では、既設の滑走路から約1km沖合に建設されていた新滑走路での運用が始まった。これにより旧滑走路は閉鎖されることになった。CVW-5の岩国移駐の準備が一歩前進したことになる。



 CQ期間中、空母ジョージ・ワシントンに着艦を試みるVFA-195のF/A-18C(164976/NF403)
出典: US Navy Official Photo Archive(100519-N-6720T-104)



 CQを終え6月4日に横須賀に帰港した空母ジョージ・ワシントンは、6月14日、米海軍と海上自衛隊とによる2010年度水中戦演習 “Undersea Warfare Exercise(USWEX) 2010”に参加するため、再び横須賀を出港した。演習は西太平洋で6月21日から25日まで繰り広げられ、演習には、米海軍から空母ジョージ・ワシントン、及びCVW-5を核とする第7艦隊戦闘部隊をはじめ、第7艦隊哨戒部隊、第7艦隊潜水艦部隊が、そして海上自衛隊からは護衛艦隊第2護衛隊群、第4護衛隊群等が参加し、対潜水艦戦の戦闘訓練が行われた。

 USWEX 2010を終えたジョージ・ワシントンは、7月3日、CVW-5を載せ横須賀に入港した。そしてクルー達は翌日の独立記念日に、CVN-73 “George Washington”の就役18年を祝った。



独立記念日の前日、CVW-5の航空機を載せ、横須賀に入港するジョージ・ワシントン(2010年7月3日)
出典: US Navy Official Photo Archive(100703-N-6720T-001)


 そして7月9日、ジョージ・ワシントン空母攻撃群が横須賀を出港し、サマー・クルーズへと向かった。このディプロイメントでのCVW-5の編成を表26-1に示す。


表26-1 2010年7月9日~11月1日の西太平洋展開時のCVW-5編成



 このクルーズの最初の訪問地は韓国釜山で、その後日本海での韓国軍との合同演習” Exercise Invincible Spirit”に参加する。ジョージ・ワシントンCSGは釜山には7月21日に入港し、4日間停泊した後演習の行われる朝鮮半島東側の日本海へと向かった。演習にはGW CSGの他、韓国駐留の米第7空軍の戦闘機、韓国空軍の戦闘機とP-3C対潜哨戒機、韓国海軍の艦艇、そして米韓併せ8,000名以上の将兵が参加している。また米空軍からは、前述の第7空軍の航空機に加え、沖縄嘉手納基地に展開中であった、ホロマン空軍基地の49WG所属のF-22Aが参加し、北朝鮮に対し無言を圧力を加えた。演習は7月25日に始まり、28日に終えている。

 話が飛ぶが、7月29日にE-2Dの量産初号機(167929)がヴァージニア州NAS JacksonvilleのVAW-120に引き渡された。CVW-5ではまだE-2C HE2Kを受領したばかりであり、当面E-2C HE2Kの使用を続けるが、近い将来、更に能力アップしたこのE-2Dを受領する時が来る。横道に逸れるが、E-2Dの能力向上について少し触れておく。まずレーダがHE2Kの搭載するAN/APS-145からAESAレーダのAN/APY-9へと換装されている。このレーダは回転機能をそのまま残し、全周捜索時には従来通りアンテナを回転させるが、捜索範囲の狭い場合はアンテナを停止させ、電子的に捜索追尾を行う。その場合には探知距離も伸延される。またGPS/CEC/SATCOMアンテナをロートドーム内に収納したため、ドーム中心に有った突起が無くなっている。さらにデータリンク機能が一層強化されCEC(共同交戦能力)が付与されている。こうした電子機器の能力アップによる消費電力増に対し、発電能力や冷却能力も強化されている。




E-2D量産初号機のVAW-120への受領式にて記念写真に納まる海軍作戦部長ゲイリー・ラフェッド提督等
出典: US Navy Official Photo Archive(100729-N-8273J-093)



 GW CSGは韓国との合同演習を終えると東シナ海を南下し、南シナ海に入る。そして8月初旬から南シナ海で開催されていた米越国交正常化15周年を記念する両国海軍の合同演習に参加し、その後空母ジョージ・ワシントンとCVW-5は、ミサイル駆逐艦マッキャンベルとチャン・フーンを従えシンガポールを親善訪問した。シンガポールのチャンギ海軍基地には8月16日に入港し、一般公開の他、シンガポール軍との交流も行われ、その一環として、シンガポール軍幹部に対する、太平洋上での艦載機の離発艦を含むキャリア・オペレーション見学が実施された。シンガポールを後にしたGW CSGは次の訪問先であるフィリピンへと向かう。

 フィリピンには9月4日に到着し、CVW-5を載せた空母ジョージ・ワシントンはマニラ湾に投錨した。今回はミサイル駆逐艦マッキャンベルとジョンS. マッケインを同行しての親善訪問となり、9月6日にはフィリピン政府要人や米国大使がジョージ・ワシントンの表敬訪問を受ける。フィリピン訪問は4日間で、9月8日にマニラを離れ、米軍の年次統合演習”Valiant Shield 2010”に参加するため、演習地のマリアナ海域へと向かう。

 Valiant Shieldは米海空軍、海兵隊の三軍による太平洋地域での統合演習で、2006年に始まり、この年の演習が3度目となる。2007年以降開催されてないことから、空母ジョージ・ワシントンにとっては初めてのヴァリアント・シールドである。演習は9月12日に開始され、21日まで続けられた。この間、海軍からはGW CSGとエセックス水陸両用即応群の艦艇14隻、原潜4隻に加え、航空部隊としてCVW-5の各飛行隊、哨戒・偵察部隊からP-3CとEP-3が参加、また海兵隊からは31MEUと岩国基地のMAG-12からAV-8BやF/A-18Dなどの飛行隊が参加した。さらに空軍からも、グアムのアンダーセン空軍基地に展開中の5BWのB-52H、7FS/94FSのF-22A、嘉手納の18WGから44FS/67FSのF-15C/D、アラスカのアイルソン空軍基地から18AGARSのF-16C/D等多数が参加している。大規模な演習であるが、状況の異なるいくつかのシナリオに分かれて進められ、CVW-5の各飛行隊も、役割を異にする多くのフライト・ソーティーをこなした。またこの演習中、退役艦を標的にした撃沈演習(SINKEX: SINKing EXercise)が行われ、F/A-18による空対艦ミサイル攻撃や爆弾攻撃が行われ、標的艦が転覆したところをHS-14のHH-60HがMk.46魚雷を放ち、沈没させた。 




 F/A-18等によるASM攻撃により転覆して黒煙を上げるイエローストーンクラスの駆逐艦
出典: US Navy Official Photo Archive(100920-N-6720T-182)



 ヴァリアント・シールドが終了すると、CVW-5を載せたジョージ・ワシントンはミサイル巡洋艦 CG 63 カウペンスとミサイル駆逐艦 DDG 85 マッキャンベルを従え、タイに向かい、10月2日に到着、ラエム.チャバン(Laem Chabang)に入港する。この親善訪問では5日間ラエム・チャバンに停泊し、市民との交流やタイ海軍との交流が図られた。10月7日に最後の訪問地タイを出発したGW CSGは横須賀への帰路に就く。この航海中の10月22日、CVW-5副司令官(DCAG)のダニエル S. ケイブ中佐がF/A-18Fに搭乗し、自身1,000回目となる空母への着艦記録を打ち立てた。その頃フィリピンで発生した台風14号が日本に接近するコースをとったため、CVW-5は早めにジョージ・ワシントンをフライオフし、10月26日に厚木へのフライインを開始している。一方GWは台風の影響を受け、横須賀帰港が、計画より5日遅れの11月1日となった。約6ヵ月の夏のディプロイメントであった。

 秋のディプロイメントは間近に迫っていた。十分な休息も取れずに11月24日、空母ジョージ・ワシントンは随伴艦と共に横須賀を出港した。またCVW-5も同日、厚木をフライオフしているが、その中にVFA-195の姿はなかった。CVW-5では唯一のレガシー・ホーネット飛行隊であるVFA-195も、いよいよライノ飛行隊への変身時期が近づいていた。そしてCVW-5が秋のディプロイメントに出払った11月30日、早朝の厚木基地をNF/412を除く10機のF/A-18Cが5機ずつの2陣に分かれ、カリフォルニア州NAS Lemooreへと飛びたった。NF/412は長期整備状態にあり、今回のトランスパックには間に合わなかったようだ。またレムーアに向け飛び立った後発の5機は、支援給油機のトラブルのため一旦厚木に引き返し、翌日の12月1日、再度トランスパックへと向かっている。今回VFA-195がF/A-18E Block 2への機種改変を完了すると、CVW-5は、4個、全戦闘攻撃飛行隊がスーパー・ホーネットを装備するという、米海軍初の空母航空団となる。秋のディプロイメントにおけるCVW-5の編成を表26-2に示す。 


表26-2 2010年11月24日~12月14日の西太平洋展開時のCVW-5編成


 またレガシー・ホーネットが厚木を去ったこの日は、米海軍厚木航空施設創設60周年記念日に当たり、厚木基地では記念式典が開催された。厚木基地は元々日本海軍の航空基地であったが、敗戦後米軍に接収され、1950年12月1日に横須賀に駐留していた米海軍第6艦隊航空団(FAW-6)が厚木基地に移駐、米海軍厚木航空基地(NAS Atsugi)として運用が始まった。その後1971年に基地の管理・運用が海上自衛隊に返還され、共同使用が始まり、米海軍厚木航空施設(NAF Atsugi)と改称されている。

 さて秋のディプロイメントに出たGW CSGは、朝鮮半島の西側の海域に向かい11月28日から4日間、韓国軍との共同演習に加わった。演習には在韓米空軍も参加し、北朝鮮の侵攻に対する抑止能力をアピールした。その後GW CSGは、日米共同統合演習 “Keen Sword 2011”に参加すべく沖縄周辺海域へと移動する。




韓国軍との共同演習に参加したCVW-5。GWからの発艦に向かうVFA-115のF/A-18E(166862/NF303)
出典: US Navy Official Photo Archive(101129-N-3418M-034)


 例年秋には海上自衛隊との合同演習、”ANNUALEX”に参加しているが、2010年は日米安保50周年の節目の年に当たり、日米共同演習”Keen Sword”に統合される形で、米太平洋軍からは陸海空軍、海兵隊、そして日本側からも陸海空自衛隊が参加して、これまでにない大きな規模で行われた。この演習に参加した日米のリソースは、艦船約60隻、航空機約400機、人員45,000名の規模に上った。

 演習は12月3日から10日にかけて実施され、弾道ミサイル防衛、島嶼防衛、統合空輸、捜索救難などの演習が、東シナ海から日本海にかけての海域、空域で行われている。日米のイージス艦は日本海に展開しての弾道ミサイル防衛に、また石川県の小松基地に展開した米空軍35FWのF-16C/D部隊は航空自衛隊第6航空団のF-15Jとともに、イージス艦の防空、敵艦への攻撃、侵入機への迎撃などの演習を行った。一方沖縄周辺海域へ展開した空母ジョージ・ワシントンンとCVW-5は、揚陸強襲艦エセックスや海上自衛隊の「ひゅうが」をはじめとする護衛艦群と共に、島嶼防衛を中心に、再上陸支援、対空、対水上、対潜訓練などもを含む数多くのミッションを消化し、日米両軍の連携を一層強固なものとする結果を残した。弾道ミサイル防衛は、北朝鮮を睨んだ抑止力の誇示であり、島嶼防衛に力がメニューに加わった要因には、尖閣列島を巡る中国の領海侵犯活動、またこの年の9月7日に発生した中国漁船の海上保安庁の巡視船への体当たり事件などの反映がある。

 GW CSGにとってもKeen Sword 2010 がこの年最後の大仕事となった。HS-14やKSL-51 Det.3を除くCVW-5の各飛行隊は、演習が終了すると空母ジョージ・ワシントンからのフライオフを開始し、その日のうちに厚木にフライインした。一方ジョージ・ワシントンは随伴艦と共に、12月14日に乗員たち家族の待つ横須賀へと帰港している。




12月12日、ジョージ・ワシントンを固定翼機として最後にフライオフするVAF-27のF/A-18E(165860/NF200)
出典: US Navy Official Photo Archive(101212-N-3418M-021)


 明けて2011年1月12日、厚木基地でCVW-5の司令官交代式が行われ、副航空団司令(DCAG)のダン・S.ケイブ大佐が、新しい航空団司令(CAG)に就任している。

 また2011年は、米国海軍にとって海軍航空誕生100周年にあたる記念すべき年であった。米海軍ではCoNA (Centennial of Naval Aviation) と呼ばれ、本国各地で各種イヴェントが計画されていた。本国から遠く離れた日本を本拠地とするCVW-5にも、その動きは見られ、CoNAを記念するマークを付けた機体が1月の初旬には現れ始めた。またVFA-115のCAG機(F/A-18E NF/300)の背中には、”100 YEARS OF NAVAL AVIATION 1911-2011”という文字の入った新たなマーキングも追加された。

 初夏のディプロイメントが実施されるまでは、例年、CVW-5の飛行隊は厚木周辺のみならず、嘉手納、硫黄島、あるいはグアムなどへ移動しての訓練に励む。2月に入ると米空・海軍と航空自衛隊との共同演習 ”Exercise Corp North 11-01” がグアムで開催され、CVW-5からもVAQ-136のEA-6BとVAW-115のE-2Cが参加した。コープ・ノースは日米二国間の航空作戦演習で、年2~3回のペースで1978年以来継続して行われてきた。今回も日本の防衛に当たっての日米両軍の相互運用性やその戦術・戦技能力の向上を目的とした演習が行われている。米空軍からはアラスカ州アイルソン空軍基地のアグレッサー部隊354WG/18AGRSのF-16C/D、三沢基地の35FW/14FSのF-16CJ、嘉手納基地18WG/961AACSのE-3Bまたグアムのアンダーセン空軍基地に配備されている2BW/20EBSのB-52Hと506EARSのKC-135Rなどが参加、また航空自衛隊からは千歳基地第2航空団201飛行隊のF-15J、三沢基地第3航空団第8飛行隊のF-2A/Bと飛行警戒監視隊のE-2Cが参加しており、脅威に対し共同で対処するための航空演習とともに、空対空戦闘や対地射爆撃訓練が2月13日から25日までにわたり実施された。

 この頃、厚木基地ではVFA-102のCO機、NF/102(166917)が、CoNAの記念塗装機としてF-4B時代のカラーリングへの塗り替え作業が行われていた。また3月9日にはCoNAの記念式典が厚木基地にて開催されている。

 その2日後の3月11日午後2時46分、誰もが予期せぬ大地震が東日本全域を襲う。震源地は東北地方の太平洋沿岸、沖合70kmの海底と推定され、宮城県で最大震度7が記録されている。その被害は広範囲に広がったが、何といっても地震に誘発された津波が想像を絶するものとなり、テレビの画面に映し出される全てを飲み尽くす津波の映像に、誰もが声を失った。近年では未曾有の災害となり、被災地での死者・行方不明者は27,000人を、全壊家屋は45,000戸を越えた。さらに津波による被害は東京電力福島第一発電所に及び、電源の喪失が原子炉冷却用ポンプを停止させた。これにより冷却水を失った原子炉は炉心溶融を引き起こし、結果的には多大な放射汚染を引き起こすこととなる。

                                 (この章終わり)      


      私のアルバムから
(本章に関連する当時のCVW-5の機体を紹介)





2009年12月22日、厚木のR/W19に着陸するVFA-27のF/A-18E(165861/NF201)




2009年12月22日、厚木のR/W19に進入するVAQ-136のEA-6B(163049/NF502)




2009年12月22日、厚木のR/W19に着陸するVFA-115のF/A-18E Block2 (166870/NF312)




2010年1月5日、厚木のR/W01を離陸するVRC-30 Det.5のC-1A (162176/NF21)




 2010年1月5日、厚木のR/W01を離陸するVFA-27のF/A-18E(165870/NF210)





2010年12月29日、厚木のR/W19に着陸するVFA-102のF/A-18F Block2(166921/NF106)。
両外翼パイロンにAIM-7を搭載している。




2010年12月29日、厚木のR/W19にアプローチするVAW-115のE-2C HE2K(165816/NF600)




2010年12月29日、厚木のR/W19に着陸するF/A-18F(166918/103)


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