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誌上個展

メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)
MERCEDES-BENZ540K (Monogram 1/24) 

by 田口博通 Hiromichi taguchi

 Vintage garageは創世記から1970年代までのビンテージレースカーとビンテージクラシックカーの連載コーナーです。クラシックな姿の中に優雅さと繊細さを内包した彼女達にしびれる方々も多いはず。 
 ビンテージ・ガレージは ビンテージカープラモデルの製作だけでなく、その独特の魅力を醸し出すビンテージカーが背景に持つエピソードにもスポットをあてています。 どうぞお楽しみ下さい。

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 昨年8月からの第1シーズン6回の連載では 主にビンテージF1グランプリレースカーとルマンレースカーを取り上げました。
 今年7月号から始まった第2シーズン6回連載は主にストリートカーを取り上げています。
 
 今月登場するのは 1930年代ドイツの最高級車 ベンツ540K。
 第2次大戦前ドイツの国力と強さの象徴として、数々の映画にも登場しています。

 このベンツ540Kはモノグラムから名作キットが発売されています。初出は1960年代初頭のことでしたが、模型店のガラス棚の上に輝く憧れの舶来キットでした。




メルセデス・ベンツ540K(モノグラム1/24)

実車について

 メルセデス・ベンツ540Kは1936年から1939年の間に、注文生産で極少数が作られたに過ぎない。Kとはドイツ語のコンプレッソル(過給機)。つまりスーパーチャージャーが装備されているという意味である。当時のスーパースポーツカーというカテゴリーの車で、エンジン出力が180HPに達するという、最強パワーの車だった。
 このパワーを生かし、当時既にドイツ国内に整備されていた高速アウトバーンでの実走で最高速度が170km/hを軽く超えるというモンスターである。
 強靭なラダーフレームに4輪独立懸架サスペンションのモダンなシャーシーに、自社製の美しいテールラインのボディを架装していた。
 直列8気筒5400ccの大型エンジンを収めるボンネットは長く、巨大で威圧感があり、左側面から突き出た2本のエキゾーストパイプの造形が精悍さを醸し出している。 メルセデス・ベンツ540Kはオープンボディで、搭乗者を宣伝するには格好の車だったことから、グローサー・メルセデスと並び、技術立国ドイツの国力と強さの象徴として、ニュース映画などにも数多く登場している。


キットについて

 メルセデスベンツ540Kも、1960年代初頭に出現したモノグラム ビンテージカーシリーズの一作であり、名作として名高い。

 このベンツ540Kのキットは今でも現役で、ドイツレベルからホワイトボディのものが販売続行されている。
 今回使ったキットは、押入れで眠りについていた 1977年にバンダイモノグラムから発売されたことのある国内版を覚醒させた。写真解説入りの日本語の親切な説明書が付属しており、塗装説明も詳細だった。当時の発売価格は1500円で、もちろん、国内版は絶版となっている。
 
 大型ボンネットをはずすと、精密なエンジンが見れるような構造になっている。また、幌がオープンと、セダンの両方に組み立てられるように配慮されたコンバーチブルキットとなっている。
 キットの箱を開けると部品はこれだけ。先月掲載のデユーセンバーグ・モデルSJに比べ、部品点数が大幅に削減が計られていて、初心者にも組み易くなっている。



 


バンダイモノグラム国内版 箱絵 


製作

ボディの塗装
 ボディはシルバーモールドで、パーティングラインもバリも見られない綺麗な表面仕上げの素晴らしいものだった。
 コクピットと仮組をし、合いを確認したら、ボディに防火壁とランニングボードを接着して、ボディを形にしてしまい塗装に入る。
 ボデイの色はドイツらしくシルバーとし、下塗りせずに、いきなりフィニッシャーズカラーCLKシルバーを吹き付けた。塗りあがりは非常にシックなシルバーになる。
 
 ボディのアクセントとなるサイドのシルバーメッキ部分はのり付きアルミ箔を貼って追加した。
 最後に実車用のカルナバカーワックスを布につけて磨き、塗装完了とした。 
 


ボディ部品 (シルバーモールド) 黒い部品は防火壁



■ シャーシーとエンジン
 アメリカ製、特にモノグラムのCARモデルの素晴らしさは、なんといっても実物どおりにシャーシー、エンジンが再現されていることだが、このベンツ540Kも同様だ。
 
 50年以上前、1960年初頭の製品化にもかかわらず、実物どおりにラダーフレームを組み、その上にエンジンとボディを架装する構造になっていて、実物車の構造さながらだ。
 また、ボディはシルバーのモールドで よく磨かれた表面仕上げで、メッキ部品のメッキが厚く、国産プラモデルに圧倒的に勝る品質の良さだった。
 
 50年以上経った現在でも このシリーズを凌駕する国産キットが見当たらないのが残念だ。
 部品点数は9点と少ないが、エンジン本体を緑。エンジンヘッド、マニホールド、などをシルバーで丁寧に塗装すればエンジンは完成する。
 
 ラダーフレームのシャーシーは一体成型で、これまた一体になったフロントサスペンションとデフギアと一体になったドライブシャフトを組みつければシャーシーはいとも簡単に形になってしまう。これを艶消し黒に塗装すれば完了である。

 この一体成型のラダーフレームのシャーシーをボディに組み込んでから、エンジンを組み込む。これでほぼ完成だ。

魅力的なエンジン部


  エンジン部品
組みあがったエンジン

一体成型のラダーフレームのシャーシーをボディに組み込めばほぼ完成。



コクピット
 コクピットはバスタブに一発成形されている。シートも計器類も彫刻が素晴らしい。
 パネルはウッドで、計器メーターを黒艶消しで塗り分けた。ステアリングは艶あり黒とした。シートはMrカラー半艶消し黒でシックにまとめてみた。
 車輪は アクセントとなるホワイトリボンはプラ部品なので、艶消しホワイトにあらかじめ塗っておき、組むのが良いだろう。

バスタブ一体成型のコクピット



 注意が必要なのが、ラジエターグリルの取り付けで、ボンネットをボディに仮止めしておいて、ラジエターグリルを取り付けると隙間が出ない。
 ウインドシールドや、ヘッドライトのレンズは接着時に接着剤で汚したくないので、先月紹介した手工芸用のボンド(木工ボンドと同じもので、先端に細いノズルがついている。)を使用すした。これは、プラスチック材料を侵さず、乾燥すると完全に透明になり、お奨めだ。
 フェンダー上のパーキングライトにはメッキ部品の上にクリアレッドを面相筆で入れている。
 せっかくのコクピットを見せたいのは人情なので、幌はたたんだ状態を選択した。


完成

 完成すると ボンネットが長く、1/24とは思えないような非常に大きな車となる。各部に輝くシルバーメッキと、ホワイトリボンのタイヤがアクセントとなり、魅力的なスタイルのクラシックカーとなった。    フェンダラインが緩やかに下がっていくリアエンドは、現在の車にはない優雅ラインで、この1930年代特有のデザインを感じさせる。





ベンツ540K その後

 540Kの価格は当時の一般的な車の10倍以上もし、注文生産の生産台数はごく少なく、ユーザーは王侯貴族など一部の富裕層だった。また大戦前のきな臭い時代だったこともあり、540Kがレースに使われたことは無かったようだ。
 大戦中はドイツ政府高官により多く使われている。
 高級車ゆえ、ビンテージカーとしてかなりの台数が保存状態よく現存しており、ドイツを始め、各国の博物館でも見ることができる。日本国内でもトヨタ博物館にメルセデスベンツ500Kが1台収蔵されている。


 1960年代にこのメルセデスベンツ540Kを最も有名にしたのが、1965年のディズニー映画 「サウンド・オブ・ミュージック」である。後半の場面で、ナチス軍から逃れるために山中を疾走するのだ。
「サウンド・オブ・ミュージック」はご存じジュリィ・アンドリュースが主演した「ドレミの歌」や「エーデルワイス」など数々の名曲を生み出したミュージカル映画である。
 物語の舞台はナチスドイツが覇権を握りつつあった1938年のオーストリア・ザルツブルグ。ドイツによるオーストリア併合(1938年)及び第二次世界大戦の前夜のことである。
 修道女のマリアは、オーストリア=ハンガリー帝国海軍退役軍人であるトラップ大佐の居城に7人の子どもたちの家庭教師として派遣される。子どもたちは数年前に母親をなくし、父親から厳しいしつけを受けてきたが、快活なマリアの影響で次第に子どもらしい素直さを取り戻していく。
 そんなマリアの姿にやがて大佐も惹かれるようになり、2人は結婚することとなったが、大佐はザルツブルグに進駐したナチスドイツから軍人として出頭するよう命令を受け、逃亡を図る。
 映画では逃亡の理由について明確に描かれていないが、史実では、オーストリア軍の高級将校は全てナチスにより、森の中で処刑されていたのである。

 そんな2人と子どもたちがナチスから逃れるためにスイスへの亡命に使用したのが、このベンツ540Kだ。映画ではその黒塗りの車の豪華な造りから大佐の地位の高さをうかがわせるが、終盤の緊迫した場面で、ナチス親衛隊の追跡を振り切り、夜の山中をスイス国境まで必死で疾走するのである。
 名場面はザルツブルクの祝祭劇場で行われたコンクールで「ドレミの歌」と、オーストリアの愛国歌「エーデルワイス」、そして「さようなら、ごきげんよう」を歌って2~3人ずつ舞台から消えていく。審査の結果が3位、2位と発表されて最後に優勝としてトラップ一家が発表されるが舞台に現れず、その表彰式の隙にトラップ一家は劇場から逃げ出していた。
 
 この物語は「トラップ・ファミリー・ストーリー」という実在のコーラスファミリーがスイスに亡命する実話に基づいている。狂ったような強大な力から逃れ 自由を得るためには、これまた、対抗する強い力を必要とする。アメリカ的な価値観でそんなことを描いていたのかもしれない。
 



ビンテージ・ガレージ バックナンバー
ビンテージ・ガレージ バックナンバー
2nd
シーズン
2014年9月号 第9回 デユーセンバーグ・モデルSJ(モノグラム1/24) 
DUESENBERG SJ (Monogram 1/24) 
2014年8月号 第8回 ド・ディオン・ブートン (1904年型)(ユニオン 1/16)
DE DION BOUTON 1904 (UNION 1/16 )
2014年7月号 第7回 アルファロメオ2300 トゥーリング(1932)(ブラーゴメタルキット 1/18)
ALFA ROMEO 2300 TOURING(Burago Metal Kit 1/18)
1st
シーズン
2014年1月号  第6回 ベンツ 300SLR (レベルモノグラム 1/24) 
2013年12月号 第5回 BENTLEY 4.5L BLOWER (エレール 1/24)
2013年11月号 第4回 ブガッティ 35B(モノグラム 1/24) 
2013年10月号 第3回 BRABHAM F-3 (エレール  1/24) 
2013年9月号  第2回 ROB WALKER Team Lotus 72C (エブロ 1/20)
2013年8月号  第1回 ホンダF1 RA272(タミヤ 1/20)


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Vol74  2014 October.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
                    editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー

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